嫌だ

今日で何もかもが終わる。



ある意味では嬉しいけど

まだ終わりたくない。





分かってたはずなのにね。

どうしよう。

学校辞めそうな勢いだ。

勿論臆病だから

そんなこと出来ないんだけどさ…

………頭では

理解出来てたはずなのに。

結局口先だけ

分かってる気でいただけで

一番肝心な心は

準備してなかったんだ。





だってまだまだ涙が出る。

それだけ大好きなんだ。

もう何にも誰にも

迷惑はかけたくないのに。



嫌だよ………

たった1年しか

あの人を知らなかった。

まだいっぱい話したかった。

まだ沢山教えて欲しかった。

数学じゃない、ご本人のこと。





結局後悔だってしてる。

何であのとき

抱き付かなかったんだろうとか

何で理由と連絡先

聞かなかったんだろうとか。



少しだけ心を開いてくれたのに。

何も言わず数学室に入っても

あの日だけは突っ込まなかった。

むしろあったかく

お帰りって言ってくれた。

…あれを学校じゃないところで

言われるのが夢だったよ。



用事はないけど居座ってた。

それでも帰れって言わなかった。

黙って横に置いてくれた。

きっと会計の仕事で

忙しかったのに。

あたしの話を聞くだけじゃなくて

話し掛けてくれた。



不器用なあの人が

苦手な機械と格闘しながら、

計算が合わないとか

愚痴をこぼしながら。



頭を撫でるとか出来ないし

そんなことしないけど

ただ触れずに

いつもみたいに構ってくれた。



他人に干渉しない

ホントに不器用なあの人が

話し掛けずにただ横にいて

あたしの好きなように

させてくれた。



それが一番本人に合ってて

あたしに出来る

最大限の優しさだったんだ。

あたしに良いように言えば

あれがあの人の愛情なんだ。







苦しいよ……

嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。



…こんなのただの

駄々っ子でしかないけど

でも嫌なんだ。



あたしの中からあの人は

まだまだ消えないし消せない。

でもあの人は?

きっと忘れられちゃうんだ。

あたしなんて忘れちゃうんだよ。

だってただの生徒だもん。

あの人は

自分の学年大好きだから。

あたしらの一個上には適わない。



最後の日に

先輩が来たとき

｢帰って貰った方が

落ち着くんだけどな｣って。

｢あたし?｣って聞いたら

｢違うよ、先輩のこと｣って。

ちょっと嬉しかったけど

｢大好きだもんね｣って言ったら

｢うん｣って。

嬉しそうに少し口の端をあげて

はっきりと言ったんだ。



だからあたしは

あの人の特別にはなれない。

一個上を超えることは出来ない。



きっと一個上の誰よりも

あの人が好き。

生徒の中ではあたしが

一番あの人のこと好きなんだ。

その気持ちだけは

誰にも負けない。

負けたくない。







……だから、あと

一年だけ心の拠り所にする。



ごめんね、先生。

勝手に卒業式の日に

逢えるってことにして

それを支えにしますね(笑





それまでは好きでいさせて。

それまででいいから先生、

あたしの下の名前、

忘れないでね。











では。